税務最新情報
2025年06月20日号 (第543)
税務に関わるAIの活用
みなさん、こんにちは。6月も後半に入りましたね。源泉所得税の納期の特例を選択されている方は、1月から6月分までの源泉税の納期限が7月10日です。期限に遅れると不納付加算税が発生しますので、ご注意ください。
さて今回は、税務におけるAIの活用についてご紹介します。
入力業務に関するAI
新聞広告などで「AI-OCR」と言う言葉をよく見かけます。OCRは、以前から文字の自動読み取りに利用されてきましたが、AI技術を活用することで文字認識率が向上し、論理的な整合性まで確認してデータ化できるようになりました。
税務の業界では、通帳のスキャンデータから仕訳データを作成したり、領収書や請求書をスキャンして伝票を作成したりするなどの利用が進んでいます。通帳は金融機関ごとに書式が微妙に異なり、領収書や請求書に至っては、様式どころかサイズもバラバラです。しかし、AI技術では単に文字を読み取るだけでなく、取引先、金額、税率など、領収書や請求書が持つ意味を理解した上でデータを取り込める点が強みです。
ちなみに、税務署の申告書や納付書は、ずいぶん前からOCR用紙が使われていました。そして、国税庁の内部システムが令和8年9月24日に刷新されるのに伴い、用紙もAI-OCRの導入に向けて様式変更が予定されています。
AIに税金のことを相談できる?
国税庁はチャットボットのサービスを提供しており、質問に対してAIが回答してくれます。ただしこのAIは、用意された回答の中から最適なものを表示するというイメージです。少なくとも誤った回答はしないため、信頼性は高いと言えるでしょう。
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/chatbot/index.htm
しかし、あくまでも想定された質問に用意された回答を表示するだけなので、現代のAIと比較すると物足りなさを感じます。
GeminiやChatGPTといったAIは、用意された回答を選ぶのではなく、質問に対してインターネットなどの情報から合理的な答えを検索して回答します。税金に関してかなり難しい質問をしても、それなりに回答してくれます。ただし経験上、平気で間違った回答をすることもあり、それがもっともらしく書かれているため、仕事で使えるレベルではありません。
しかしこの分野は驚くべきスピードで進化しており、半年後あるいは1年後には、AIで税務の質問に概ね回答してくれる時代が来る可能性もあります。現在でも、上手に質問することで精度の高い回答を引き出せますが、「上手な質問をする技術」が求められていると感じます。
税務調査でもAIの活用
令和5年度から国税庁がAIを本格導入した結果、申告漏れの所得金額の総額および追徴税額の総額が、過去最高になったと公表されています。
https://www.nta.go.jp/information/release/kokuzeicho/2024/shotoku_shohi/index.htm
NHKの報道によると、AIに申告漏れがあった事例を学習させ「申告書の不備が多い場合」「きりのよい金額で申告している人」「現金収入の多い業種」など、申告漏れのおそれのある納税者を重点的に調べる税務調査になったとのことです。
従来は人間が調査先を選ぶため、取引金額が多い会社などを優先するなど、調査先に偏りが生じることがありました。しかしAIを活用することで、全件に対して「申告書の不備がある場合」や「きりのよい金額で申告」などを抽出して、調査先として選定するようになったのかもしれません。結果がでているところがすごいですね。
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